不夜城→side妖

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妖は争いを好む。 殺戮。 絶叫。 絶望。 ありとあらゆる『負』の感情が、沸き起こるからだ。 だが、それは己が有利な立場に居る時。 圧倒的不利の場合、妖は『逃亡』という選択肢を選ぶ。 しかし3匹の妖は許さなかった。 彼等を欺いた、1匹の妖怪への怒りが隙を与えなかったのだ。 彼らが築いたのは。 屍の山。 人も妖怪も神も。 全てが目を覆うような光景。 酒呑童子。 血のような紅い髪が特徴。 茨木童子。 かつて渡辺綱に左腕を切り落され、奪還したという逸話を持つ。 夜琥。 神社の使いとされる赤狐を司り、神が居なくなる刹那まで側に居た妖。 夜琥の名はさておき、2人の盗賊は有名すぎた。 特に酒呑童子はインパクトがあるのか、赤毛を見ただけで逃げ出す妖怪も居る。 「逃げるなら、最初からケンカを売るな」 「アレは土蜘蛛に雇われたモノ。言っても意味が無い」 『伽羅が心配だ。こんな事になるなら、連れてくれば良かった』 夜琥のセリフに、2人は頷く。 さすが名コンビ。 動きはピッタリだ。 「理由は後で話す。今は、伽羅を助ける」 『ほぅ、言い訳をする気はあるのか? 酒呑童子殿?』 「これだけネタを明かした。もう隠す必要が無い」 『茨木童子、それは真か?』 「嘘は言わない。嘘と判断したら、俺を喰らっても良い」 「ちょっ、そうしたら俺のサポートが居なくなるじゃん!!」 死体の中で弾む会話。 非常に不気味な光景だが、3人は気にしない。 そして騒ぎが一段落した頃。 さらにこの場に似合わない、のんびりとした声がした。 「あかんなぁ。こんなに殺してもうたら、駒が居なくなってしまう」 それはエセ京都弁を喋る、真っ赤な着物を着た女妖怪だった。
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