夏祭りと狐

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私、入谷伽羅。 容姿平凡、頭脳平凡。 ごくごく普通の高校生。 今年こそ彼氏を作るぞ!! って頑張ったけど…… 結果、惨敗中。 何で、私の好きになる人は、みんな彼女が居るのかな…… でも私は諦めない。 まだ華の高校1年、16歳になったばかりだもの。 きっと素敵な出会いが待っている。 「伽羅、さっさと片付けなさい!!」 首にタオルを巻いたお母さんが、物凄い顔でこっちを睨む。 今は年に一度のイベント、夏祭りの後片付け中。 町のルールでは、若者が率先してやることになってる。 だけど夜のデートが忙しいらしく、手伝ってくれる若者なんか居ない。 明らかな人数不足に嘆いている大人達の格好の餌食となったのが、この私。 『暇なんだから、手伝いなさい!!』とお母さんの一喝で、後片付けメンバーに加わった。 ああ、泣きたくなる……。 そうぼやきつつ、私は地面に落ちているゴミをゴミ袋に捨てている。 ホント、偉すぎだよ、私。 自画自賛で自分を励ましつつ、空き缶を拾おうとした瞬間。 妙な視線と、微かに草むらが動く音を聞いた。 「ん? 何か居る?」 茂みの向こうでガサガサと何かが動く。 ……ちょっとくらい見てもいいよね? 「あっちのゴミも拾って来るね」 お母さんの返事も聞かず、私は茂みの中に飛び込んだ。 ……う、思ったより、進みにくい。 「誰か居るなら、返事して~!!」 何の返事も無い。 確かに気配はするのだが、相手は警戒しているようだ。 声一つ上げない。 「こうなったら、絶対に見付けてやる」 草木を掻き分け、ひたすら前に進む。 小学生の頃、男子生徒に土下座させた事もあるのよ。 そんな私が、薮に負けるハズが無い!! ……根拠の無い自信だけど。 私はガサガサと音を立てながら、闇雲に周囲を捜索。 もし弱った動物だったら、見捨てる事なんて出来ない。 「私の名にかけて、絶対に見付ける!!」 その声が神様に届いたのか。 急に薮が途切れ、ポッカリとした空間が現れた。
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