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電波も届かなく、携帯電話は使用出来ない。観たいテレビ番組も放送されない地域で、何一つ便利な事がないこの不便な環境の中で、その人は突然隣に引っ越してきた。
彼は物書きさんだ。
ここへ来た理由は“自然の中で囲まれた場所で仕事をしたら、執筆速度が早くなるかもしれない”という、いかにも物書きさんが言いそうな理由だった。
彼の名前は遊佐 暁人(ゆさ あきひと)、長い黒髪と縁なし眼鏡が似合う男性だ。
第一印象はとても真面目そうな、穏やかな人だという印象を与える。
が、実際は違った。
その逆だった。
彼は一言でいうと面白い人だ。
子供のような性格で、人をからかう事が大好きで、だけど優しくて笑顔が素敵で、私にとって暁人さんは兄のような存在だった。
自然に毎日、日課のように暁人さんの家に通う。最初の頃は遠慮をしていた。だけど暁人さんは来るもの拒まずといった感じでいつでも私を歓迎してくれた。
だからか、私は気付けばそれが当たり前のように今では、暁人さんの側に普通にいる。
そんな私に、生まれて一度も田舎から出た事がない私に、暁人さんは都会のお話をしてくれた。
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