兄のような人で…

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「うわ…沢山、暁人さん……これ」 「あはは、頭の中ではちゃんと構図出来ていたんだけど、実際執筆してみると難しいね」 そう言って手元の原稿用紙をぐしゃりと丸めて畳の上に捨てた。 一体何回こうして同じ事を繰り返したのか、暁人さんは新しい原稿用紙を取り出した。 しかし中々ペン先が進まない。 「暁人さん、少し休んだ方がいいよ。少し顔色も良くないし」 まるで今まで一度も休んでないというふうに顔色が悪く、痩せこけていた。目の下の隈も目立つ。 心配する私を横に暁人さんは苦笑いを浮かべる。 「大丈夫大丈夫。心配してくれて有難う美帆ちゃん。でももう少しで〆切間近だから僕は休むわけにはいかないんだ」 「でも全然進んでないよ」 「うっ……」 「疲れてる時に無理しても、執筆進まないし、それに良い作品にならないよ。だから少し休んでよ」 「美帆ちゃん」 「あ、そうだ。私、おにぎり持ってきたんだった…………はい。梅と鮭と鱈子とオカカ、種類豊富でしょ」 暁人さんは一人暮らしだ。
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