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――雨宮紗英。
拓夢は目を瞑り、その顔を思い浮かべた。
紗英は誰と話すときでも、野に咲く花のように可憐な微笑みを浮かべている。
誰とどんな話をするときもニコニコと微笑み、そんな紗英に感化されるのか、紗英が誰かと会話しているときに人の悪口が聞こえることなんて今までに一度だって無い。
そんな清らかな彼女の、なんと愛らしいことか。
「紗英、紗英かぁ……」
先程のメールを受信した、ストラップのひとつもついていないケータイを手に取り眺める。
「今のが雨宮なら、なあ……」
いつの間にか自然と目で追ってしまっている彼女。
これが恋だということに拓夢が気づいたのは、いつのことだったか。
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