第一章

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目が覚めると見慣れない天井が目に入った。家の天井は白色なのに対して、今見ている天井は灰色のコンクリート。冷たい色だった。 そして天井の次に頭に意識がいく。後頭部の辺りが変にズキズキ痛む。どうやら何かで殴られたか、転んだようだった。 意識がまだ朦朧とした中、上半身だけ起き上がり、目を細めて部屋の中に視線を徘徊させる。全く見知らぬ場所だった。 四方四面の灰色のコンクリートで囲まれた部屋で、ドアが正面にあり、はめ込み型の窓が自分の背では届かない部分にある。そして、古びた焦げ茶色の机。 見渡した後、自分が置かれている状況を再確認するが、未だに焦りがなく冷静だった。 それは恐らく記憶が全くないからだろう……。この部屋に来る前に誰といたか、何をしていたか、が全く思い出せないのだ。 僕はこめかみを両手で押さえて、目を瞑り、なんとかまた思い出そうとするが全く何も頭の中で映像として映らない。 後頭部が痛むことから、自分なりの解釈として軽い脳しんとうを起こしているのではないかと疑った。脳しんとうを起こすと、一時的に記憶が飛ぶからである。 僕は頭を押さえながら、ベッドの上からゆっくりと降りる。ふらふらと足元が覚束ない。立ち眩みが起こった。 再び目を閉じて、その場で一時停止する。動くにはまだ早かったみたいだ。
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