第一章

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しばらく立ち眩みを堪えた後、少しずつ足を動かし、部屋の中をふらふらと徘徊する。まだ依然と視線が定まらず、揺れる……。 倒れるように側にあった焦げ茶色の机に、体全身を預けるかのようにもたれ掛かる。両手を付いたとき、埃が宙をキラキラ舞う。 焦げ茶色の机の備え付けの椅子に腰掛け、引き出しを一段ずつ開け放っていく。机を開けるたびにむせそうになるような埃が飛び交った。 一段目の引き出しには、鍵が入っていた。鍵だけであとは何も入っていない。恐らくこの部屋の鍵だろうと解釈した。それをポケットに忍ばせ、二段目、三段目と引き出しを開けるが、何も見つからなかった。 軽く舌打ちをして、仄かに光が洩れる壁際の窓に目を移した。自分の背では届かない部分にあり、外の景色を窺うことは不可能だった。机に乗っても届きそうにない高さだった。 焦れったい気持ちを堪え、椅子から離れ、再び部屋を見渡す。蜘蛛の巣が張った角……。埃にまみれた机。 ここはどこだ……?廃墟か……? 認識力が徐々に回復するに釣れて、胸中は恐怖と不安で一杯になる。思わず叫びたくなる衝動に駆られる。 「なんなんだよ……一体なんなんだよ!」 思わず声を張り上げてしまう。体の中は苛立ちと不安、恐怖、焦燥感が入り混じっている。全く記憶がない自分にも苛立ちを隠せなかった。 とりあえず、僕は正面にある扉に向かう。重厚な扉だった。
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