第一章

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ドアノブを右に回し、ゆっくりと押す。しかし、ドアは開かない。反対に引いてみると、重厚な扉が軋みながら開けていく。目の前に徐々に広がる見慣れぬ光景。 ドアが完全に開くと、僕は廊下に出た。薄暗い廊下で天井には仄かに光る電灯がぶら下がっている。 ドアを閉めると、勢いよく閉まった。そしてドアの向こう側でカチッっと何か音が鳴ったのが聞こえた。僕は再びドアノブを引っ張るが開かない。 がむしゃらに何度も引っ張る……。廊下に響き渡る乱暴な音。焦りに似たものが再び胸中を締め付ける。 ふと冷静になる。先程の鍵が頭の中をかすめたのだ。どうやらこの扉はオートロック式のようで、鍵がないと部屋には立ち入り出来ない様子である。 しかし、部屋に戻っても仕方ないのに気付き、ドアを背にして廊下を端から端までゆっくりと見渡す。僕の部屋の他にも何部屋か廊下には存在していた。 そして廊下の端は突き当たりで、反対側は螺旋状の階段になっている。僕はしばらくその場に立ちすくみ、何かを考えていた。 もしかしたら、僕の他にこの建物には誰かがいるのではないか……? そしてその人物こそがここに僕を連れて来た犯人なのではないか……? 思考を始めると急に不安が襲ってくる。もし、犯人が僕を殺すつもりなら……。慌てて首を動かし、辺りを見渡すが武器らしきものは存在しない。 廊下に何部屋かあるものの、もし誰かいて武器を持っていたら……っと考えると迂闊には動けなかった。
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