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とある古びた誰も使われない教会に、2つの影。
ヒビ割れたステンドグラスの隙間から一筋の光が射す。そこから細かな埃が舞う。教壇の側にある古びたマリア像の前に2つの影が動いた。
二人は向かい合うように両手を握っている。それは何かを今から誓う儀式のようにも見えた。
「約束よ、何があっても私達は一緒よ」
「うん、恋人なんていらない。私には由香里だけいればいい」
富澤由香里と白河七海は親友だ。中学で知り合い、今は同じ高校に通っている。
性格は正反対な二人で共通点などないのだが今でも長く続いている、ある意味奇跡だった。
「七海、指を出して」
「え」
七海は首を傾げながら素直に指を差し出す。すると割れたステンドグラスの欠片の一部を由香里は取ると、それを七海の指にあてがい、一本の線を引いた。
「っ…」
紙で切ったかのような痛みが七海を襲う。続いて由香里も躊躇う事なく指に線を引いた。
ぷくぷくと浮き上がる玉のような血。
それを七海の指と合わせる。
「口だけじゃ忘れちゃうでしょ?」
「でも切らなくたって」
「うふふ儀式みたいじゃない」
「神聖ではないわ」
「七海はご不満?」
「ううん、ちょっとびっくりしたけど由香里と特別な約束を交わせるなら、なんか嬉しいわ」
「私もよ…」
由香里は微笑む。
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