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一体、何でそんなに驚くのか?
私は首を傾げる。
「…あんた、本当にこの村の?」
「えぇ、そうです。」
「…まさか…有り得ん…。」
尚も驚く老人に私は意を決し、尋ねる。
「あの、何が有り得ないんでしょうか?」
「………。」
「あのぉ…。」
「おっ、あ、あぁ…。」
「…。」
「…あんた、この村で何があったのか知らんようだな。」
「えぇ…何も知らないんです。
幼稚園迄はここに居たんですが、小学校に上がる前に東京の叔母さんに連れて行かれまして…。」
私の両親は私が幼稚園を卒業したと同じ時期に、交通事故で亡くなった。
私に兄弟はいない。
それを可哀相だと叔母さん(母さんの姉さん)が思い、私を引き取って育ててくれたんだけど、高校を卒業した日に私は叔母さんの家を出た。
仲が悪かった訳じゃなく、これ以上迷惑をかけたくなかったから。
「そうか…。どうだ?この村の隣り村に儂(わし)は住んどるんだが、茶菓子でも食べて話しをするか?
あんたの知りたい事を話してやる。」
一瞬、老人の言葉に躊躇(ためら)ったが
「御願いします。村迄は私が送りますので、どうぞ。」
車のドアを開けて老人を乗せた。
すると
「安心せい。儂の家にはババァが居るから。」
車に乗るなり言い、老人はガハハハハと笑った。
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