神隠し

4/11
前へ
/316ページ
次へ
一体、何でそんなに驚くのか? 私は首を傾げる。 「…あんた、本当にこの村の?」 「えぇ、そうです。」 「…まさか…有り得ん…。」 尚も驚く老人に私は意を決し、尋ねる。 「あの、何が有り得ないんでしょうか?」 「………。」 「あのぉ…。」 「おっ、あ、あぁ…。」 「…。」 「…あんた、この村で何があったのか知らんようだな。」 「えぇ…何も知らないんです。 幼稚園迄はここに居たんですが、小学校に上がる前に東京の叔母さんに連れて行かれまして…。」 私の両親は私が幼稚園を卒業したと同じ時期に、交通事故で亡くなった。 私に兄弟はいない。 それを可哀相だと叔母さん(母さんの姉さん)が思い、私を引き取って育ててくれたんだけど、高校を卒業した日に私は叔母さんの家を出た。 仲が悪かった訳じゃなく、これ以上迷惑をかけたくなかったから。 「そうか…。どうだ?この村の隣り村に儂(わし)は住んどるんだが、茶菓子でも食べて話しをするか? あんたの知りたい事を話してやる。」 一瞬、老人の言葉に躊躇(ためら)ったが 「御願いします。村迄は私が送りますので、どうぞ。」 車のドアを開けて老人を乗せた。 すると 「安心せい。儂の家にはババァが居るから。」 車に乗るなり言い、老人はガハハハハと笑った。
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1969人が本棚に入れています
本棚に追加