気まぐれのプレゼント

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「そうだ!よく兄さんの部屋からよく聴こえてくる曲だよ」 「俺の部屋から?」 和寿はクラシックが好きだ。さすがに弾く事はできないがあらゆるクラシック曲を聴きにいったり部屋でCDを聴いたりしている。 正直レコードの方がしっくりくるのだが、和寿にはレコードはない。なのでCDで我慢していた。 沢山あるCDの中で和寿はよく聴く曲があった。今思えば和寿はその曲を特別気に入っていたのかもしれない。 その曲は…… 「“ドビュッシーの『パスピエ』”か」 「そう!それパスピエ!聴いた瞬間ビビってきたんだ。僕あれ凄く気に入っちゃった」 「………」 「だけどパスピエか……多分ないかも」 「何故そう思う」 「だって一文字もパスピエって文字見た記憶ないもん」 「………」 「ここにはないみたい。………はぁ」 本当に残念そうだった。深い溜め息を吐きながら、音楽コーナーを出る。和寿はその後ろに続いた。 「パスピエ…か」 テンポ良い曲が和寿は気に入っていた。パスピエは文字通り『通行する足』という意味だ。 そのテンポはステップする足音のようにも聞こえる。 ピアノに合わせてステップを踏む足音。 まさか和史もこの曲を気に入っていたとは。 正直同じ曲を気に入られるのは好きじゃない。しかしクラシックに興味なかった人間がこの曲を気に入るのは悪い気はしなかった。
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