事故

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ここ最近和史は学校でも部屋でもパスピエを聴いていた。 だってこの曲は和寿が好きな曲だから。 兄が好きな曲は弟も好きになりたい。 何度聴いても飽きない曲。 「お礼がしたいな」 和史はお礼に和寿にプレゼントをやろうと考えていた。 しかし和寿が欲しいものが和史はわからない。 「今は冬だから冬ものの何かをプレゼントしよう」 しかしそれでも何をあげたらいいかわからない。 適当にお店に入って出て入っての繰り返し。 中々ぴんとくる奴が見つからないなと思った時、お店の中で飾られているあるものに目がいった。 「スノードーム」 懐かしい。和史は思わず呟いた。 丸いガラス玉の中に家と木が立っていて、少し揺らすと雪が降る仕組みのスノードーム。 中身は一体どうなっているのかとずっと不思議でじーっといつまでも眺めていた記憶がある。 「これ…兄さん気に入るかな」 悩んだ末、和史は購入した。少し高かったがお礼のプレゼントには良い値段だった。 「フッフッフーン、フフフーフフ、フーフフフッフッフーン」 パスピエの曲を口ずさみながら家へ帰る。 手には小さな箱が大事に大事に抱えられていた。 信号が赤から青になる。和史は左右に車がいない事をちゃんと確認したが上に渡った。 しかし…… キィィィイィイ……!? 「え?」 激しいブレーキ音を耳に和史の躯は大きく跳ね、地面に叩きつけられた。 .
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