憎い存在

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いつの日からか、此処(家)は自分の居場所じゃないような気がした。 親からの愛情、温かい家庭、何不自由ないのに、和寿(かずとし)は居心地を悪く感じていた。 和寿には五歳年下の弟、和史がいる。 無邪気で明るくて風邪一つしなく、とても優しい弟。 しかし和寿は生まれた時から和史を嫌っていた。 何故だかその頃の和寿は幼くてわからなかった。兄弟とは仲良くあるべき、支え合わなければならないものだとわかっているのに、和寿は和史を好きになれない。 和史はそんな和寿の気持ちに気付かなく、金魚の糞みたいにくっついてくる。 『お兄ちゃん。一緒に遊ぼう!』 『……』 『友達からゲーム借りたんだ。すっごく面白いんだよ。お兄ちゃんも絶対はまるって』 『……』 弟の存在を無視するように、和寿は自室へ向かう。部屋に鍵がついていて良かった。さすがに和史は部屋にまでは入ってこれなかった。 しかししつこくも部屋の外に佇んでいる。 『ごめんなさい』 『………』 『何か僕、お兄ちゃんを怒らせるような事したんだよね。ごめんなさい』 『………』 苛立つ気持ちが湧き上がる。 悪い事をしていないのに謝る。和寿はそんな和史にイライラしていた。 一緒にいるだけで不愉快 側にいるだけで不愉快 同じ空気を吸っているだけで不愉快 同じ家にいるだけで不愉快 何もかもが不愉快で仕方なかった。
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