変わらぬ眼差し

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―失明 それを聞かされて何故動揺が隠せないのだろう。 アイツの事が嫌いなのに。寧ろそうなって喜ぶべきなのに、何故かやるせないような虚しさを感じる。 白い扉をノックする。相手の返事が返ってくる。 和寿は銀の取っ手を握ると、それをガラガラと音を鳴らして引いた。 白く眩しい光が視界を覆う。 目に映る弟の姿に、和寿は言葉を失った。 「あ?兄さん」 「……」 これが和史なのか?自分が知っている和史だったか? 初めて見る人物だと思った。 瞼を覆う包帯が痛々しい。 思わず手を伸ばしそうになったが、和寿は直ぐに手を下ろした。 「何故俺だってわかった?」 「ドアの音で」 「音?」 「ドアをゆっくり引いたでしょう?音が違ったから兄さんかなって」 「……そうか」 取りあえず和史の隣に立った。 「具合はどうだ」 「良好だよ。早く退院したいよ。あと早くこの包帯を取りたい」 「っ…」 「なんかね。事故の時軽く瞼の上を傷付けたみたいで、傷が消えるまで暫く包帯してなきゃいけないみたいなんだ。お陰で視界真っ暗でトイレ行く時や食事の時は大変だよ」 「……」 知らないのか? 自分の目が失明している事に…… ごくりと唾を飲む。手の平にいつの間にか滲んだ汗に、ぐっと握り拳を作る。 「何も知らないんだな」 「?兄さん」 どうせ包帯を取ればいずれ分かる。 .
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