変わらぬ眼差し

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その後、家に医師から電話があり、和寿は父に思い切り殴られた。あれから和史は取り乱したそうだ。 それはそうだろう。いきなり、もうお前の目は何も映らないなんて言ったら、誰だって混乱する。 もう和史の見舞いはいかなくていいだろう。一応この見舞いは無理に父にお願いされたものだ。 好きで行ったわけではない。 しかし、アイツの涙を見て、これでいいのか?ともう一人の自分が訴えている。 何故突然そう思ったのか自分でもわからない。 同情・哀れ、きっとそれらの類だろうと思った。 自分がそんな気持ちになったのは。 そうじゃないとおかしい。 和寿は日を置いてから再び和史の見舞いに行く事を決意した。 ******************* 「あ、兄さん」 責められる覚悟をしていた。しかし和史の声は今まで兄に向けた声と同じだった。 そして包帯は解かれていた。傷はまだ薄く残っているものの包帯を巻く程ではない。 目線も和寿に向けられていて、まるで視力でも戻ったのかと錯覚を覚える程に、和史の和寿に向ける視線は事故に合う前と変わらない、温かなものだった。 .
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