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「この前はごめんね。取り乱しちゃって」
「いや…」
謝るのはおかしい。この場合悪いのは自分だろう。
「具合はどうだ」
「良好だよ……て、また同じ事言ってる、兄さん」
「そうか」
「そうだよ…あはは」
何故笑っていられるのか。
事故にあって、失ったものは多いのに、何故元気でいられる?
「無理して笑っているか」
「え?無理してないよ。どうして」
「いや…」
ずれたフレームを中指で持ち上げる。
「あ…兄さんにずっと渡したいものがあったんだ」
「渡したいもの?」
「うん、でも事故の時に粉々になっちゃって。多分花瓶の横に潰れた箱が置いてあると思うんだけど」
和寿は花瓶に目を向ける。すると確かに潰れたものが置いてあった。
そっと手を伸ばすと粉々のガラスと小さな家、小さな木。白い粉のようなものがあった。
「これは…」
「CDのお礼にスノードームをプレゼントしようと買ったんだけど……あはは、これじゃ部屋に飾る事すら出来ないね」
「……」
無言でそれを見つめる。
和史はその無言が怒っていると捉えたのか涙声で小さく呟いた。
「あーあ…、また…兄さんに嫌われちゃった…」
「?和史」
「…おかしいな。なんで上手くいかないんだろう。兄さんに喜んで貰おうといつも頑張ってるのに空回りで……本当…っ、なんで僕……こんなに駄目なんだろうな…っひっく…」
「……」
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