憎い存在

3/5
前へ
/32ページ
次へ
そんな日が毎日続いた。 毎日毎日苦痛の日々が続いた… そして和寿が23になっても和史の兄への眼差しは変わらなかった。 「兄さん!」 「………」 既に成人して、普通なら今頃アパートかマンションに住んでいる。それなのに和寿はこの家に縛られていた。 父と母が、ある日突然和寿に言った。家を出るなら和史が高校を卒業してからにと。 父と母は弟に甘かった。そして弟の和史はこんなに邪険に突き放しても変わらず懐いてくる。 生き地獄だった。 「兄さん、見て!中間テスト、85点!」 「………」 「英語苦手なのにびっくりしたよ!頑張って勉強した甲斐があった!」 「……」 それで? 85点を取ったからなんだ? 和寿は和史に気付かれないように溜め息を吐く。 単純な和史の考えはすぐにわかる。 苦手な科目で良い点取ったから褒めて欲しいんだろう。 しかし嫌いな人間を褒められる程、和寿は器用な人間じゃない。好きなら好き、嫌いなら嫌いとハッキリしている、態度も示しているつもりだ。 「兄さん?」 「この程度の点数で浮かれるなんて、おめでたいな……」 「え……」 嫌味を込めて、和史の横を通り抜ける。 早く家から出たい… 和寿は心の中で呟いた。 .
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

169人が本棚に入れています
本棚に追加