憎い存在

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しかし家を出ていない和寿は成人しても権利は親が持っている。 逆らえない立場だ。 「憎い…アイツが俺を此処に止めようとしている…、どこまで憎たらしいんだ…」 最近は自室にいるだけでも息苦しい。 「父も母も嫌いだ。俺を自由にしない奴は皆嫌いだっ…、俺は成人している。鳥籠に入った小鳥じゃない。大学に行っても帰る場所はこの家。今までと何も変わらないじゃないか。変わったのは年を取った事だけ…」 この家には誰も自分の味方がいない。 皆敵だ… ******************* 「兄さん」 「……」 迂闊だった。部屋の鍵を閉めるのを忘れていた。 和史は躊躇いがちに和寿の部屋に入ってくる。 最悪だ。 和寿は内心毒吐いた。 「これ、期末の英語の答案用紙」 「っ……」 受け取らないまま和寿はその答案用紙を見て目を見開く。 「ひゃ…100点取ったんだ!兄さんのお蔭だよ」 「は?」 わけわからない事を言われ、眉を潜める。 「前英語の答案用紙見せた時、兄さん“この程度の点数で浮かれるなんておめでたいな”て言ったでしょ?だからあれから頑張って更に勉強したんだ」 「……それで何故俺が感謝される」 「え?だって兄さん、僕に渇を入れたでしょ?」 「は?」 「もっと高みの点数を目指せ!って言ったんだよね。確かに85点で浮かれ過ぎてたよ。さすが兄さん。僕、兄さんの弟でとても誇りに感じるよ」 「……」
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