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─深夜1時。
カラオケを終え、一口分だけ残ったビールを飲み終えると、会計を済ませる。
暖房で温められた体が、店外へ出た途端、冷たい風によって冷やされる。
(更に寒くなってるし…。)
もう冬も本番だと、寒がりな私はまだ始まったばかりなのに、真冬のように感じていた。
それでも沙織は、寒さなんて感じでいないような明るい口調で、楽しそうに話す。
「イサトはさぁ、ノリが良いから、愛海の飲み方に合うと思うんだよねぇ♪」
『マジで~?楽しみだね、ソレ♪』
私はお酒が好きな訳ではなくて、酔って騒ぐ、あの飲み会という空間が好きなの。
だから、ゲームして、一気して、酔っ払う。
場所なんて、全く関係ない。
それが私の飲み方。
酔う為にお酒を飲む私にとって、〝酒は飲んでも飲まれるな〟なんて言葉は存在しない。
酔えないなら、お酒なんて好き好んで飲まないもん。
…これから行くイサトの店の話をしながら歩いていくと、黒く頑丈そうな扉の前で、沙織が止まった。
沙織が扉に右手を向け、私に笑顔を見せる。
「ここだよっ!」
そう言う沙織の顔は、いつもより増して可愛い顔をしていた。
これが、恋をした女の子にかかる不思議な魔法。
みんな、恋をして可愛くなっていくんだね。
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