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目の前に見知らぬ女が堂々と人のベッドを占領していた。
異国の金の髪に似合わず身に纏っているのは肩を出した嫌に露出が高い着物。
髪を一つ後ろに束ねているのは赤い薔薇の髪飾り。
和洋を組み合わせた女がそこにいた。
「だ…誰だあんた…」
恐る恐る訊くと女は偉そうな口調で返してきた。
「我の名を訊く前にお前の名を云え。人に名を訊く前に先に己の名を云うのが礼儀だろ」
「っ…」
なんだこの女。
一昔前のお偉いさん口調でこれまた昔のお偉いさんが言いそうな言葉を言ってくる。
「どうした。お前には名はないのか?それとも云えぬ理由でもあるのか?」
「……言えない理由は、ない」
「なら教えろ」
「っ…」
どこか威厳を感じる迫力に思わずたじろぐ。仕方く俺は自分の名前を名乗った。
「渡瀬…望」
「望…それがお前の名か」
「あぁそうだよ。だから今度はお前の名前を教えろ」
「その前にもう一つあるだろ?」
「?」
首を傾げると女は溜め息を漏らす。
「茶と菓子だ、お前のとこにはないのか」
「は?なんで俺が…」
「お前のとこは客人に茶菓子も出さぬのか?」
「いやあんた客人じゃないだろ」
「とにかく茶菓子も出さないんじゃ我は名も教えんな」
「むむむ……この女…」
「何かいったか」
「い~え」
こめかみを痙攣させながら笑顔で答える。
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