俺を呼ぶ声

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今世界には魔物が蔓延っている。 と言うと緊迫した感じだが、多少危険はあるものの今のところは至って平和だ。 魔物退治を職業にしている決して少なくはない。 かと言って多いわけでもないが… 零也も魔物退治を職業としている『退治屋』の一人だ。 『退治屋』は『情報屋』から賞金付きの魔物の情報を買い、退治すれば賞金が与えられる。 また、生け捕りや期限つきのものなど、与えられている条件を満たせるほど賞金は高くなる。 簡単に言うなら賭け事のような仕組みだ。 本来『情報屋』はびこる魔物をどうにかしようと立ち上げられた機関だったが、いつのまにかある種の娯楽的なものになっていた。 賞金首は早い者勝ちで大物は特に競争率が高い。 零也も今回高額の賞金首を狙っていたのだが、仕入れた場所がここから遠かったため移動してる間に狩られた後だったらしい。 いつもなら殺気だった同業者の気配を感じられるのに今は穏やかなものだ。 同業者がこの森にいないということはないだろうが、少なくとも大物狙いは撤退した後らしい。 「……ま、いっか」 今回来たのも獲物の割には情報料が安かったからで、あまり固執もしてなかった。 まあ、場所が遠かったため安かったのかもしれないが… 入った森は険しく、小物ではあるが別の賞金首もいる。 小遣い稼ぎ程度だが塵も積もれば何とやら。 今回の情報料分くらいは稼げそうだ。 そんなわけで引き続き探索を行っていた。 本日何匹目かの獲物を狩ったところで辺りを見回せばいつのまにか薄暗くなっていた。 今日はここまでにして野宿をすることにしよう。 そう思い、どこか野宿できそうな場所を探す。 耳を済ませば微かに川の流れる音。 水辺は何かと便利だ。 焚き火用の木を拾いながらその音のする方へと歩き出した。
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