俺を呼ぶ声

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ほどなく歩けば川辺についた。 結構大きい川だ。 雨の日は危険そうではあるが、今はその心配は必要なさそうだ。 「明日も良い天気そうだな…」 荷ほどきをしながらぽつりと呟く。 「…………」 むなしい。 別に群れるのが好きなわけでもないが、こう何度も独り言を呟くのはどうだろうか。 狩りをしてる間はそちらに集中してるため気にならないが、一旦離れるととたんに暇になる。 一人が苦痛なわけではない。 そう。 暇なのだ。 といっていても仕方がない。 今はパーティを組んでいないのだから。 人が増えると狩りは楽になるが分け前が減る。 それが嫌で組んでいない。 つまりは自業自得なのだ。 「ま、どうでもいいけど」 腹も減ってきた。 食料の調達のために零也は川に入るのだった。 狩りは魔物についている『石』をとった時点で終了となる。 『石』は魔物の原動力。 心臓というわけではないようだが、『石』が体から離れると魔物は動かなくなる。 仮死状態になるらしい。 だが生きている状態で『石』を剥がすのは至難の技だ。 だから高額条件に生け捕りが上がっているのだ。 大抵仕留めてから『石』を回収する。 ちなみに一度剥がした『石』はもう二度とつくことはない。 仮死状態からどうやって復活するのかは知らないが、そんなのはどうでも良い話だ。 生け捕った獲物がその後どうなるのかも同じ事。 『退治屋』は獲物、もしくは『石』を『情報屋』に引き渡した時点で仕事が終了する。 零也は持ち運びに便利と言う理由で『石』のみ回収している。 やろうと思えば生け捕りもできるのだが面倒なのでしない。 重いし。 魚が焼けるまでの間、本日の成果を確認するため零也は袋から『石』を取り出す。 『石』は一見宝石にも見える。 『石』には魔力が秘められているため、実際加工されて魔法使い用装備品の装飾に使われていたりもする。 こんな小さな石ころに力が秘められているなんて不思議なものだ。 そんな事を思いながら零也はその中の一つを手にとり焚き火にかざした。
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