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声が聞こえるくらいだから近いのかと思ったのに、歩けど歩けど一向に声の主の元にたどり着けない。
声は零也を森の奥へ奥へと誘う。
どうやらこの声は魔法の類いの力にのせて届いているらしい。
これはいよいよ戦闘に備えていた方がいいかもしれない。
というか、魔物だったらメッタ斬り決定。
そうでなければタコ殴り。
「楽しくなってきたな」
ある意味物騒な事を呟きながら零也は声に誘われるままに嬉々と足を進めた。
ようやくたどり着いた頃には完全に日が沈んでしまった。
これで魔物だろうがそうでなかろうが少なくともタコ殴りが確定した。
声は目の前にそびえる岩壁の中から聞こえた。
岩の魔物か…?
わざと隙を作ってみるが何も起きない。
魔物なら襲いかかってきそうなものだが…
今度は逆にありったけの殺気を放つ。
これは簡単だ。
なんせこれからタコ殴りという祭りが待っているのだから。
『……っ!?だ…誰だ!!?』
岩の内部から零也の殺気を感じ取ったのかようやく反応が返ってきた。
声から判断するに少年といった年頃か、もしくは女か…
零也が何も言わないでいると再び岩の内部から声が聞こえた。
『…………なぁ…、…誰か……いるのか…?』
今度は控えめに。
それでも何も言わないでいるとしびれを切らしたのか再び大声が聞こえてきた。
『オイ!誰かいるんだろ!?何か言ったらどうだこの…コ…コ……こ…このコンコンチキ!!』
「…………。」
罵倒を浴びせようとしたらしいが咄嗟に思い浮かばなかったらしい。
微妙な罵倒が飛んできた。
短気な上に頭が悪そうだ。
(魔物では無さそうだな…)
そう判断しようやく零也も口を開いた。
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