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「心配しなくても出してやるさ」
『本当か!?』
込み上げる笑いをようやく治め口を開けば中から嬉しそうな声が聞こえる。
「あぁ。せっかく時間と体力を消費してここまで来てやったんだからな。中から何が出てこようが、ここで何もしなかったらそれこそただの無駄足だ。お前を出してそしてタコ殴る」
『殴んのかよ!!』
「殴るさ。それは決定事項だ」
バキバキと間接を軽快にならし肩を回す。
中からは見えないが零也は嬉々としている。
冗談ではなく本気らしい。
『あー…、…もう出してくれるなら何でも良いよ…俺、頑丈だし』
「なんだドMか?」
『違ぇよ!!だけどにこんなとこにいるよりはマシって話だよ!』
「おまえがドMだろが何だろうがどうでもいいけど」
『よくねぇぇぇぇ!!』
「さっきも言ったが俺は魔法は使えない。解呪はできないぞ?」
『シカトして話進めんなよ!!ったく…。……術の解き方は俺が知ってる。ほんの少しだけだけど魔法使えるからな』
はぁ、と深いため息が中から聞こえた。
魔法…とはさっきの声がそうだろうか。
だけど声も口調も似つかない。
『あぁ、だって女の方がよってくる率高そうだろ?』
「ドMオカマ…」
『Mでもカマでもねぇよ!そのネタから離れろ!!』
ガチャガチャびったんびったん音が聞こえる辺り盛大に暴れているのだろう。
「ほら、遊んでないで早く解き方教えろよオカマ」
『カマじゃねぇ!!』
「だって俺、お前の名前知らねぇし」
『叶多だよ叶多!』
「カマタ?」
『カ・ナ・タ!!』
「はいはい」
『なんかさらっと流された!?』
「もう何でもいいから出たいなら早く解き方言えって」
『ーーーっ!…はぁ……、…不自然に草が生えてるところあるだろ?』
諦めたのか、盛大にため息が聞こえた。
促されるままに足元を見ると確かに数箇所変に草が延びている部分があった。
他が芝生程度の長さの中、ヘタってはいるものの伸ばせば膝丈くらいにはなるだろうか。
『そこの根元。呪がかけられてるんだよ。土の魔法だから草がよく育つ』
「これを抜けば良いのか?」
『…そうだな…うん、抜いても良いか。ただ気を付けろよ。魔法のせいで草の強度が増してるから怪我するかもしれない。血は流さないでくれ。ややこしい事になる』
「…了解」
ヘタっていても強度があるのか…
ならば直接抜くのではなく掘り起こした方がいいのかもしれない。
零也は短剣を取り出すと地面に突き立てた。
が。
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