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「悪いんだけどもうひとつ頼んで良いか?」
こもってた声がクリアに聞こえる。
外から聞いていたよりも若干高めの声。
いよいよ性別が判断できない。
中は月明かりなど入らないため暗くて中の様子を窺うことはできない。
中からジャラリと音が聞こえてくるのだから縛られているのだろうとは思うのだが…
「刺さってる杭を抜いてくれないか?これがあると中を照らせなくてさ…」
「……杭?」
「そう。封呪具なんだ」
「でもお前声飛ばしてきただろう」
「あれは思念を飛ばしただけだ。そう難しいことじゃない。…暗くて足元危ないかもだけどさ…、俺からはあんたの姿が見える。まっすぐ歩いてきてくれ」
「杭くらい自分で抜きゃいいのに」
「だから抜けないから頼んでるんだろ」
言われるままに中へ入る。
ひんやりとした空気を見に纏う。
今の季節にはちょうどいい。
ジャラ…
何か固いものを踏んだ。
おそらく鎖か何かだろう。
「あと3歩くらい…そう。で、手を前にまっすぐ伸ばしてくれ」
まだ目が暗闇に慣れないため指示に従うしかない。
手を伸ばしてみればコツン、と手に何かが当たる。
「これか?」
「……っ、…そう。それだ」
独り言のつもりだったのに痛みをこらえるような声が下からあがる。
「……これ、お前に刺さってんのか?」
「手にな。お陰で動けなくて苦痛だっ……い、いだだだだだ!!」
零也は杭を持って上下に動かす。
傷口を広げられる痛みに叶多は悲鳴をあげた。
「痛ぇな!何すんだよ!!」
「何って抜いてんだろ?」
「そのまま引き抜きゃいいだろ!?俺に刺さってるって確認したくせに何やってんだよこの馬鹿!!」
「…………」
ぐにぐにぐにぐに…
「ぎゃああぁぁぁぁ!!痛え!全力で痛ぇ!!ごめんなさい!馬鹿って言ったの取り消すから!優しく!ソフトに!!抜いてください!!痛ェェエエエ!!!」
「お前の悲鳴聞いてるとゾクゾクする…」
「そんな心にも思ってないドS発言いらねぇから!!」
「なんだ。つまらんな」
そう言うなり突然引き抜く。
叶多は痛みに崩れ落ちそうな体をなんとか保ち、もう片方の手に刺さっていた杭を自力で抜いた。
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