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それでも、大貴に彼女が出来た事に素直に喜べなかった。
「……はぁ」
周りに気付かれないように溜め息を吐く。
自分の席に頬杖をついて、読みかけの本をパラパラ捲る。
古本屋でみたSF小説。読んですぐにはまったのに今はただの文字を並べただけのつまらないものに見えてしまう。
目だけ動かし横目で大貴と彼女の荻野を見つめる。
「っ…」
とても楽しそうで、お互いの事しか見えていない。入る隙間なんてなくて、とても仲の良い羨ましいカップルだなと周りのクラスメイトは思っていた。
二人は何を話しているのだろう。
気になって目が離せない…
「……大貴」
「ふふ…まるで恋する乙女の眼差しね」
「っ!?」
突然の声に振り返る。誠に声を掛けたのは柿澤だった。
「何…言ってる」
「だって凄い熱視線だったわよ?」
最悪だ。ぼーとしてたとはいえそんなに見ていたとは。
バレたかもしれない。大貴の名前も呟いてしまったし…
「そんなに好きなんだね“荻野さん”の事」
「……え?」
突然出てきた荻野の名に間抜けな声が出た。
もしかして柿澤さん、聞こえてなか…った?
「?あれ、違うの?も…もしかして咲良君…」
「ちっ違う!誤解するな」
「あはは、わかってるって。確かに加賀君と咲良君仲が凄く良いけど、そんな目で一度もみた事ないから安心して」
「…あ…有難う」
ほっと胸を撫で下ろす。
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