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落ちた桜の花びらが、
路上の隅を埋める4月の始め。
少年はブラウンのベッドから
静かに身を起こした。
そして一言一人言。
「……くそだりぃ。」
少年、前園 光輝 (マエゾノ コウキ)は、
眠そうに半開きの目元を擦る。
そして、虚ろな灰色の瞳を壁に吊られた
青い時計盤に向けた。
時間が分かると、
光輝は漆黒の髪を掻きむしる。
「初日から遅刻……
入学式で途中入場は気まずいよな……
どうしよ。」
そう言う割にあまり気にしていない様で、
だらだらと台所に向かう。
昨日買ったばかりの食パンを
トースターに入れてスイッチを押すと、
香ばしいにおいが台所を満たしていった。
窓の外は薄暗い雨天。
だが、なんだか心地好い朝だ。
8時時50分──
光輝は既に入学式に遅刻している為、
ゆっくりと朝を過ごした。
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