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「まぁまぁ……しっかしまぁホント、
じいさんも老けたね~。
“雷帝”がデスクワークなんてさ。」
光輝はダグラスをまじまじと見つめる。
後頭部にまで光が反射するつるつるな頭、
所々繊維がほつれている長いローブ、
シワの目立つ目元と口の周り……
10年前までランクS、“雷帝”の名で
戦場を駆け回っていた面影はない。
「もう大昔さ……私はそう感じる。」
ダグラスは寂しげに笑うと、
1枚の書類を光輝に差し出す。
「さて、これが私から君への依頼状だ。
『学園の警備、生徒の観察、
そして学園生活の満喫』だ。
他に約束事は無し、
学園生活を大いに楽しんでくれたまえ!」
「あぁ……ホントにありがとうな、
『じいさん』。
いや、これからは『学園長』だよな。」
優しい笑みを浮かべるダグラスに、
光輝は満面の笑み……とは言っても、
口の端を吊り上げた様な笑い方しか
出来ないが、それでも精一杯応えた。
「けど、“雨天の天使”の名は
念のために隠しておきますよ。
有名すぎますから。」
「うむうむ。
正体は隠しといた方がよいじゃろうな。
さて……これが学園の地図で、
こっちが学園のしおりじゃ。
君の組は『1ー6』、位は『特待生』、
学園長からは以上じゃ。」
お互い口調を生徒、教師に戻して言った。
光輝は手を横に深くお辞儀すると、
学園長室を後にした。
「さて……どうなるじゃろうなぁ?」
学園長は1人、腕を組んで呟いた。
その目は“雷帝”の威光はなく、
若木の成長を眺める優しい老人の目だ。
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