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??「ふふ…さて、自己紹介といきましょうか」
翔龍「あぁ、俺は 天羽翔龍 だ。貴女は?」
翔龍は右手をゆっくり持ち上げ、差し出す。
??「私は
『八意永琳』(やごころえいりん)よ。宜しくね。」
永琳は翔龍の手を握りながら、この永遠亭で薬師をしているわ、とつけ加えた。
翔龍は不意に手を離し、永琳に頭を下げた。
翔龍「感謝する。貴女がいなければ、俺は今此処に居なかったかもしれん…迷惑をかけたな…」
その感謝と謝罪の言葉に永琳は、少々の威厳を混ぜてこたえる。
永琳「頭をあげなさい、翔龍。」
翔龍「………。」
その言葉に、翔龍は頭をゆっくりあげた。
ピシッ!
翔龍「……つっ…」
頭をあげ、永琳を見ようとした時、翔龍の額を永琳のデコピンが襲った。
しかし、それほど強くやった訳でもないようで、翔龍は痛みと言うより驚きの方が大きく、今は額を抑え、怪訝な表情で永琳を見ている。
対する永琳は頭に手を当て、少し呆れたような怒ったような顔をしている。
永琳「はぁ…全く、迷惑だなんて考えなくていいのよ。だって翔龍、貴方はもう…
幻想郷の…家族なんだから。」
翔龍「……家族…?」
翔龍は信じられないといった表情で永琳を見る。
永琳は翔龍の瞳を見つめ、ハッキリと、その言葉を紡ぐ。
永琳「…えぇ、『家族』よ。」
翔龍「………。」
それを聞き、翔龍は俯く。
すると永琳は、身を乗りだし
静かに、柔らかく、翔龍を抱き締めた。
永琳「翔龍?貴方はもう、幻想郷の人間なの。
拒絶されるのが怖いかもしれない…
此処でも一人になってしまうかもしれない…
そんな不安、持ってないかしら?
少なくとも、私には貴方の瞳に『それ』を感じたわ。」
翔龍「……っ…!!」
図星なのか、翔龍の手に爪が食い込む。握り過ぎて、手が真っ白になっていた。
キュ…!
永琳は左手を背から離し、翔龍の右手をゆっくりほどき、弱く、しかし強く、指を絡めた。
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