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永琳「安心しなさい。こっちにはそんな奴いないわよ。
いたとしても、私達が凝らしめてあげる。
だから、少しは頼りなさい。
辛かったら、いつでも来なさい、私が貴方の力になるわ。
それに迷惑とか、そんなこと気にしなくていいのよ。だって…」
永琳はそう言って絡めた指を解き、再び翔龍を抱き寄せる。
翔龍「……家族だから…?」
翔龍は少しだけ顔をあげ、遠慮がちに言う。
永琳「ふふ…正解。そう、家族だからよ」
永琳はその答えに満足げな声で答える。
すぐ傍で、永琳が微笑んだのが翔龍にはわかった。
永琳「さて、たまにはウドンゲの手伝いでもしてあげようかしら…」
グイッ!
そう言いつつ、その場から立ちあがろうとした永琳を、翔龍が引きとめた。
永琳「翔龍…?」
翔龍「永琳……もう少し…もう少しだけ……このままでいさせてくれ…」
その言葉からは、切実な願いが滲み出ていた。
『行って欲しくない』…という願いが。
永琳「…」
永琳は返事として、静かに翔龍を抱きしめた。
小さく、もう少しだけよ、と言って。
――
―――…―――――……
永琳「…落ち着いたかしら?」
しばらくして、不意に永琳が翔龍に問い掛ける。
翔龍「あぁ……すまな…」
スッ…
そう言いかけた翔龍の口に、永琳の人差し指が止める。
永琳「ふぅ……全くもう…」
永琳はそうため息をつくと翔龍から離れ、戸口に向かい、歩き出した。
突如歩き出した永琳に、翔龍は、はっと気付き、慌てて“ある言葉”を言う。
翔龍「永琳!あ……ありがとう…」
永琳には翔龍が顔を背け、若干頬を朱に染めているように見えたそうな。
永琳「(あら…可愛らしい面もあるじゃない)
そう、それでいいのよ…
さて…
コホンッ…」
月の光が差し込む静かな部屋に、永琳の咳払いが響いた。
途端に、暖かな雰囲気が一変する。
翔龍「閑話休題…か?」
永琳「えぇ…それじゃ、まずは…」
トテトテ…
ししょー、師匠ー
永琳「……また今度ね」
翔龍「あぁ…また、だな」
そうして二人が笑い合っている中、先程の足音と声の主、鈴仙が襖をあけ、部屋に入ってきた。
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