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「そんな――嘘でしょ―――!?」
少女も走る速さを増す。
その行為、死地においてだからこそ成せる。
――――少女の足は限界だった。
立ち止まれば倒れるぐらいに。けれど走る。
その足は今、限界の痛みを知らない。
窮地においての絶対的な高揚感、緊張感。
要は脳内麻薬の大量分泌。
一時的な、逃避本能である。
「ハ、ハ、嫌、嫌死にたくない!」
零れる涙。
魔物は距離にして先ほどの半分、15メートルまで接近している。
そこに、場違いな声が流れた――――
「もし、お嬢さん? 道を尋ねたいのだがいいかな?」
まるで黒髪のような艶のある黒のコート。
所々に金の刺繍を施したそれを、青髪の少年は着ていた。
少年は少女の隣をこともなげに走る。
澄ました笑顔は端麗な容姿を際立たせていた。
「だ、誰!?」
「失礼。俺はエリアス。シュレイン・ノーグ・エリアス」
少年はサラッと自らの名を名乗ると、不適に笑った。
「道を尋ねたいんだが、いいかな?」
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