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少女は眉間にシワを寄せ、エリアスを思い切り睨んだ。
それもそうだろう。
自分が今、魔物に追われているのはわかっているはずなのに、この男、エリアスはなにもしないのだから。
「助けたら教えてあげるわよ!」
「なるほど、助けるとは後ろの魔物のことを言ってるのかな? 残念だがそれは無理だ。なにせ俺は助けてと懇願されなければ助けない主義だからな」
はは、と場に合わない馬鹿にした笑いが森に響く。
その間にも魔物は距離を縮め、今や10メートル。
グリズリーマザーは魔物の中でかなり足が遅く、その速さは人間とそう大差ない。しかしそのかわりに、獲物を逃がさぬほどのスタミナがあるのだが。
「ならさっさとどっかいけば!?」
――――少女は、助けてとは言わなかった。
昔から負けず嫌いな少女は、ここにきても負けず嫌いで居続けた。
「じゃあサヨナラをさせてもらおう。実は言うと、道なんて、尋ねる必要はなかった。ここの全容は把握しているからな」
「いいからどっか行ってよ!」
「言われなくても。ああ、ちなみに、そこから先は大きな岩が道を塞いでいるから気をつけろよ」
そういって、少年は森の木々に消えた。
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