出会い

5/10
前へ
/19ページ
次へ
「ハ、ハ、ハ―――誰、か――」  離れない。  少女の頭の中は、先ほどの少年でいっぱいだった。  この窮地だから、あの綺麗な少年に恋をしてしまったのか、と考えると、先ほどの自分が馬鹿らしくなってくる。  少女の胸は、締め付けられるばかりだった。  酸素は無く、恐怖だけが肥大する。  そんな中少女は、行き止まりに、たどり着いた。 「い……わ……?」  否、それは岩というよりは壁。  その高さは、けして登れる高さではない。  少女は、この行き止まりを前に、少年の言葉を思い出した。 「本当、だったんだ……」  ドドドドド――――  魔物は、もう目と鼻の先という程に近づく。 「嫌。死にたくない。まだ死にたくない。まだ死にたくない!」 「グルォォオォォ!!」 「まったく、そこまでだグリズリーマザー」  ――――――――!!  瞬間、世界は音を失った。  ――――それは、音を壊すほどの音だったのだ。  隕石の落下でも起きたのかという破壊音。  少女は耳を塞ぎ身を伏せ、辺りの木々は崩壊し、魔物は、跡形もなく消滅した。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加