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「ハ、ハ、ハ―――誰、か――」
離れない。
少女の頭の中は、先ほどの少年でいっぱいだった。
この窮地だから、あの綺麗な少年に恋をしてしまったのか、と考えると、先ほどの自分が馬鹿らしくなってくる。
少女の胸は、締め付けられるばかりだった。
酸素は無く、恐怖だけが肥大する。
そんな中少女は、行き止まりに、たどり着いた。
「い……わ……?」
否、それは岩というよりは壁。
その高さは、けして登れる高さではない。
少女は、この行き止まりを前に、少年の言葉を思い出した。
「本当、だったんだ……」
ドドドドド――――
魔物は、もう目と鼻の先という程に近づく。
「嫌。死にたくない。まだ死にたくない。まだ死にたくない!」
「グルォォオォォ!!」
「まったく、そこまでだグリズリーマザー」
――――――――!!
瞬間、世界は音を失った。
――――それは、音を壊すほどの音だったのだ。
隕石の落下でも起きたのかという破壊音。
少女は耳を塞ぎ身を伏せ、辺りの木々は崩壊し、魔物は、跡形もなく消滅した。
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