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手首を叩いてフライパンが返り、中のケチャップライスはタマゴに巻かれる事なく、外に飛び出し、タマゴは崩れ落ちた。
「あっ!」
力加減などわからなかった。
こぼれ落ちたケチャップライスを慌てて拾い上げようとした。
「熱っ!」
ガスレンジの周りがこんなに熱い事を初めて知った。
今考えればケチャップライスの量も半端なく多かったし、無理もない事態だった。
もう心の炎は灯になっていた。
だが、俺は諦め無かった。
最後のタマゴ二個を手に最後のチャレンジ!
より慎重にタマゴを焼き、ケチャップライスだか何だかわからなくなった物を入れた。
今後はフライパンを返す様な高等テクニックはやめて、箸でゆっくりずらして動かし、フライパンの片側に寄せた。
人間とは学習する生き物た゛。
もうそこにゴールテープが見えてる。
だが若さとは恐れを知らない。
フニィシュは綺麗に決めてやろうと凝りもせずフライパンを返そうとした。
人間とは失敗を繰り返す生き物だ。
見るも無惨にその「オムライス」らしき黄色と赤色に焦げ茶色の物体は打ち上げられた謎の生物の様にフライパンの中にあった。
心の炎は消えた。
それでも腹の虫は収まらず、俺はそのお世辞にも「オムライス」とは言えないケチャップライスに焦げたタマゴが混じった熱くもあり、冷たくもあるものを掻き込んだ。
味は食べられる程度の物だった。
腹の虫は収まったが闘った疲れが一気に押し寄せ、俺は眠りについた。
その後、帰ってきて台所の惨劇を見た母ちゃんにめちゃめちゃ怒られた事は言わずともわかるだろう。
あれから「オムライス」に対する考えは180度変わった。
今でも大好きな食べ物はと聞かれたら迷わず答える。
「オムライス」はチャンピオンだ。
今では自分の息子に「オムライス」を作る事がしばしばある。
あの時の闘いは今だに作る度に思いだす。
中学一年の夏休み、諦め無かった闘いを…
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