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平らな地面に横たわる
あの日、運命は音も立てずに俺を捉えた。
漂う声が聞こえる。そして俺は静かに目を瞑る。
駅のホームの喧騒は、目を閉じた俺にとって意味のない雑音でしかない。
ここは平らな地面か?なにもない空間か?
意識が体を抜け出し浮遊する。閉じた瞳からでなく、その意識で世界を見る。
崩れたバランス、本当に一人きりの世界。まるで檻が分け隔てなく俺達を囲み、心と心を通わせる妨害をしているようだ。
だから言葉が生まれた。だから音楽が生まれた。
君の記憶に余韻を残すように。その殻の内側の思いを変えるように。
例え触れられなくとも。
未だ瞳は閉じたままだ。
溢れていたノイズも消えた。
俺は手を伸ばす。檻の内側からでも何かを掴むために。
俺は手を伸ばす。
抗いようのない運命なんてない。
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