最低女でも構わない

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「これ。ケーキ買ってきたんだ。後で一緒に食べよう」 「ありがとう。じゃぁ、適当に座って待ってて。あとは私がやるから」 そう言って私は台所に入る 時間を見ると5時15分 (…あの子は何時くらいに来るのかな) 私は時計を見ながら思わず笑みがこぼれた 今日は私の誕生日って裕太には言ってあるけど 本当は違う 今日は裕太と愛子の2ヶ月記念日だ 裕太は完全に忘れているようだけれど愛子は今日の為に色々と企んでいた事を私は知っていた だからこそ愛子は今日、裕太とデートをしていたのだけど 愛子ならその後の事も考えていたに違いないと私は踏んでいた なのに、そんな裕太がこんなに早く帰ってきた 愛子はきっと物足りないに違いないし、その性格を考えると愛子は必ずここに来るはずだと私は思っていた リビングの方で裕太の携帯が鳴るのが聞こえた 「…い…きょ…め…。」 遠くの裕太の話声は台所にいる私にははっきりと聞こえない 料理も一段落した所でリビングに行ってみることにした 「今は家…だけど、ごめん。今日は…明日までに出さないといけない課題があるから。」 私がリビングに入ると裕太は丁度電話中 私はそれを分かっていながらわざと声を掛けた 「裕太。お皿取って欲しいんだけど…」 少し声を抑えたけど、電話の向こうの人には多分聞こえていただろう 裕太は慌てた様子で私を見る 「え?誰もいないよ。俺だけだけど?…あぁ。TVじゃない?」 必死で取り繕う裕太の姿に笑いが込み上げるが私はそれを必死に耐えた 「あ…ごめん。電話中だったんだ」 申し訳なさそうな顔をつくり、小声で謝ると私は台所へと戻った (…愛子。早く来ないかな)
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