抱き枕に抱く淡い思い。

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「隊長!これからどうしますか!?もう奴らに対抗する術は残されていません!」 部下の加賀夜の焦燥に駆られた荒い息使いの混じる声と今の絶望的状況が私の思考判断をジワジワと螺旋のように回り、淀み、狂わせていく。 「…………」 まさか八体の人外に、我ら人類が破滅に追い込まれているなどとは、百年前の平和というぬるま湯に浸かっている脳天気で馬鹿な奴らは思いもしないだろう。 私も、もし百年前に生まれていたのなら、そう思っているはずだ。 「仕方ない。あの先を抜ける」 私はこの暗闇の通路に続く先に行き止まりとなっている白い壁を見遣る。あの壁はカモフラージュでその先は異世界へ通じる扉。いつでも逃げれるように開きっぱなしだ。 「…………」 冷や汗が頬を伝った。それは追い詰められている証拠を意味している。いや、残された二……四人の人類は既にこの世界では詰まれされてしまっているのかもれない。元々少なかったが。 ハハハ……全く笑えないな。 「いいんですか?でも……あの扉を開けた先に、僕達の自由は一切保証されていませんよ。もしかしたら、今より悲惨な目に遭遇するかもしれないですし……何より、僕としては奴らに人類の意地を見せたいです!」 「……自爆……か?」 加賀夜は小さく頷く。でも……それは強大過ぎる敵への恐怖と迫りくる死への焦りと新人特有のちっぽけな勇気が彼を突き動かしているのだろう。 「やめとけ」 「でも!?」 「命を粗末にするな。隊の規則だぞ。命令に反するのか?」 「…………」 「まだ死ぬべきではない。生きれる術が残されているのなら、それを最大限に活用するんだ。お前の命を奴ら如きに渡すのだけはやめてくれ」 「……分かりました」 「それじゃあ……行くぞ」 「……はい!」 私達は通路を駆けた。 そして壁をいとも簡単に突き抜けた。 その先に何があって……何が私達を待ち受けているのかは……未だ未知数である。  
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