抱き枕に抱く淡い思い。

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「おい……おい!……いい加減起きてくれ!!……お願いだから」 声が聞こえる……。女の子のような音程の高い声……。でも、確か母さんはバリバリのキャリアウーマンで渡米中だった気がするし、妹は何とか学園の女子寮に入ってていないはず……。 それじゃあメイドのフィーラさんか? いや、それは俺の妄想の中での愛奴隷だから違うか。 「もう八時だぞ!学校に行く時間じゃないのか?」 あぁ……幼なじみの葵か……。 でも彼女結婚したんだよなぁ……。十七歳という多感な時期に今大流行中のできちゃった婚(笑)で。そっちの方は馬並にお盛んなんですねって言ったら、包丁の腹で叩かれたっけな……。死んだかと思った。まず目が違うもんな。工業排水以上に濁ってたもん。 「お前しか頼るやつがいないんだから……」 じゃあ一体誰が……? 「今日は五連休中の初日ですので休みです。そこんところどうかご了承下さい」 でも起きてやんない。弓羽ちゃんがもっと抱いてと急かすから(←幻聴) 「分かった……」 物分かりの良い方で。 「分かったから……抱き枕抱き締めて弓羽ちゃん弓羽ちゃんってうっさいんだよっ!!!」 「オウッ!?」 ゴスッ!という鈍い音と同時に見事に踵落としを食らってしまいました。 言葉に表し切れない激痛と共にこめかみが更に窪んだような気がします。目がこんにちはしているのかと錯覚もしてしまいましたさ。 おしまい……。 「す……すまない!やり過ぎた!大丈夫か!?生きてる!?」  
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