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「わーい、ありがとー。大事に食べ──るか、こんなもん!傷んでいるって分かってて食うやついねーんだよ!つか盗んだの一個だけじゃなかったのかよ!」
リトはレナードが差し出した林檎を受け取り、つっこむと同時に床に勢いよく叩きつける。その勢いで林檎は砕け、床を果汁で塗らした。
「あーあ、もったいない。酸味が強くて美味いぞ?」
「その酸味は傷んでいるが故の酸味だよなぁ!?誰が食うかボケ!」
また相手のペースに流されていることに気付き、軽く咳払いをすればいい加減この終わりが見えないこのやり取りを終わらせようと、リトは話を戻す。
「……んで?結局あんた何者なんだよ?旅人じゃないんだろ?」
「ん?ああ、そういえばそんな話をしていたんだったな。うん、俺はな、次期魔王だ」
「…………ハイ?」
あれだけ長い時間をかけたのに、返ってきた答えは短く、さらに突拍子もない内容だったため、リトは茫然とする。
「いや、恥ずかしながら俺はレベル1でな。それで現魔王のオヤジにレベル上げしろって言われて、強制的に現世に飛ばされた。んで、今に至る」
しかし、レナードはそんなリトにお構い無しで自分がどうして旅をしているかの経緯を語る。ちなみに、恥ずかしながらと言ったが、とてもそうは見えなかった。
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