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「別にいいじゃん、芸人。人々に笑いを届ける素晴らしい職業だろ」
「いや、分かってるんだが……なぜかショックを受ける……」
レナードがリトをフォローする──実際にはそんなつもりはないのだろう──が、リトは両手両膝ついた状態で沈んだままだった。
レナードはそんなリトを、「こいつ本当に面白いやつだな~」と思いながら、その様子を眺めていた時だった。
家の扉が開き、誰かが入ってくる。その気配はレナードとリトがいるリビングへと近付いて、その姿を現した。その人物はリトと顔立ちが似ているのをみれば、リトの母親だろう。
「ただいま~。ちょっと話長くなっちゃった。リト、いるの?」
そう言って家の中に入ってきたリトの母親は、ようやく自分の娘が沈んでいるのと、それを見て笑っている青年に気付く。
はたから見れば怪しい絵だが、母親は特に気にした様子はない。むしろ、娘が友達を連れてきたと思って喜んでいるようだった。
「あら、リトのお友達?はじめまして、リトの母です」
笑顔で挨拶する母親に、リトは目で訴える。「こいつには関わるな!いいように遊ばれる!」と。
しかし、母親に気付く気配は見られない。そんな時、レナードがゆっくり動いた。親子共々この心が鬼のようなやつにからかわれるのか──リトはレナードが動き出したのを見てそう思った。
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