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(──こ、こいつ!お母さんを味方につけてオレをからかう気だっ!)
そんなレナードを見て全てを悟ったリトは、怒りを瞳にかなり込めて、レナードを睨みつける。
「こら、リト!あんたが悪いんだろう!そんな目で睨んでいないで、早く謝りなさい!」
(違うって、お母さん!そいつに騙されんな!オレ間違ったことをしてない!)
そう言えたらどれほど楽かと思ったが、明らかに悪いのは自分となっている今の状況では、そう言っても意味がない──いや、むしろ悪化するだけだろう。
「ぐっ……ご、ごめんなさい……」
色々叫びたいのをこらえ、リトは自分が無実でありながらも頭を下げて謝った。
「そうそう。最初っからそう素直に謝ればよかったんでしょうが」
母のそんな声を聞きながら、リトはそっと顔を上げてみる。レナードは自分の顔を両手で挟み、横に引っ張った変な顔でアッカンベーをしていた。
「……後で覚えてやがれぇぇぇ……っ!」
リトは再び怒りをこめた目でレナードを睨み付けながら、母親に聞こえないように呟く。
そんなリトの怨みを含んだ声が聞こえたわけではないが、娘の様子がおかしいことに気付いたリトの母親はレナードの方に振り返った。
しかし、レナードは目を見張るような早業で、最初にリトの母親に見せた爽やかな笑みに変えていた。
(こいつ……マジで覚えてろよ……)
そんなレナードに、リトは再び悪役のようなセリフを、今度は心の中で呟いた。
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