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♪
「こら、リト!あんたも少しは手伝いなさい!」
「やだよ、めんどくさい!」
ここはこの世界にある大陸の中で一番小さな大陸、レイドにあるフェイエというのどかな村。
その村にある一つの家から、外見十五、六の少年が出てくる。
麦わら帽子を被り、渋い緑色をしたノースリーブの上着を白い半袖シャツの上に羽織り、紺の長ズボンを履いている。顔は幼さが残っているようで、どこか中性的だ。
家の手伝いが嫌で家を抜け出したリトは、ぶつくさ言いながら村の中を走っていた。
「ったく、お母さんも毎回毎回手伝え手伝えってうるさいんだよなぁ。それ以外言えねぇのかよっつーの」
いつも二言目には同じことしか言わない、聞き飽きた母親の言葉に、心の中がもやもやとして気分が悪い。ふと聞こえてきた鳥の鳴き声に、リトは上を見る。
二羽の鳥が、気持ちよさそうに優雅に空を飛ぶ。空は快晴。青く澄みわたった空を見上げていると、心のもやもやが晴れていくようだった。
「いい天気……平和だなあ」
眩しく輝く太陽に目を細め、リトは呟く。こんな清々しい日は、どこかに遠出したくなる──そう考えていた時だった。
グゴギュルルルルルル~…………。
そんなのどかな光景にはまるで合わない、低く響くような音が突然聞こえてきた。
リトは訝しげな表情を浮かべて、一体何の音だろうと、その音のした方向へと目を向ける。
音がしたのは村の出入口。そこには、長めの銀髪に、鋭く紅い目をした長身の青年が、腹を抑えて立っていた。
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