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五分後──。
「……ぜーっ、ぜーっ…………!」
短時間でリトは両手両膝をつき、額に大量の汗を浮かべながら息を切らしていた。その姿だけで、どれほどレナードにからかわれ続けたのかが分かる。
「お?もう反応する気なしか?ツッコミはなかなかだったが、まだまだだな」
そしてリトをこんな風にした本人はかというと、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、腕を組んでリトを見下ろしていた。
「うっせー……つか、偉そうにしてんじゃねぇよ……!」
「おお、その状態でもまだつっこむか。その心意気あっぱれ、ってやつだな」
感心したように言うレナードを見て、リトはもう何を言っても無駄かと、大きくため息をついて立ち上がる。
「はあ……つか、お前一体何なんだよ?旅人にしては軽装だし、林檎で腹下すへっぽこだし」
「へっぽことは失礼だな。それに、人に名を聞く時はまず自分から名乗れ」
レナードのペースに慣れることはなく、流されっぱなしのリトは、もう一度盛大なため息をついた。何か反論することを諦めたのだが、今回は控えめに反論した。
「失礼なのはどっちだよ、まったく……オレはリト。見て分かる通り村人な?ほら、言ったぞ。お前名乗れよ」
「ふふ……よくぞ訊いてくれた。俺の名はレナード・ヴァンデッド。旅人と答えたリトには残念賞として傷んだ林檎をやろう。威力は実証済みだ。自分で」
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