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三夜子は〝マッティーノ〟という名前は知っていたが、まさかいま、この時にここへ来るとは思わなかった。そして、その人気店に入ることを少し躊躇した。
「ここって、映画にも使われてましたよね?」
「ああ、そうだっけ?」
上の空で五十嵐が応じて、三夜子を店の奥へ連れていく。
イタリアンは三夜子がもっとも好きなもののひとつだった。料理が苦手な彼女は、よく瓶入りのパスタソースに世話になっていた。
やがて二人は、窓外に生い茂る緑を眺められる席についた。
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