#10ダイヤのピアス

16/39
前へ
/1495ページ
次へ
 三夜子は〝マッティーノ〟という名前は知っていたが、まさかいま、この時にここへ来るとは思わなかった。そして、その人気店に入ることを少し躊躇(ちゅうちょ)した。 「ここって、映画にも使われてましたよね?」 「ああ、そうだっけ?」  上の空で五十嵐が応じて、三夜子を店の奥へ連れていく。  イタリアンは三夜子がもっとも好きなもののひとつだった。料理が苦手な彼女は、よく瓶入りのパスタソースに世話になっていた。  やがて二人は、窓外に生い茂る緑を眺められる席についた。
/1495ページ

最初のコメントを投稿しよう!

689人が本棚に入れています
本棚に追加