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「ああ」
五十嵐は自分でボトルを持ち、中身をグラスに注ぎながら言葉をつないだ。
「僕も、ミンティエンは初めてなんだ。有名な建築家、ピエール・マルケス氏が手がけたらしいよ」
そう言って彼は、赤ワインを一口飲んだ。
三夜子は膝の上にに置かれた紙袋を覗いた。
「気に入らない?」
三夜子は五十嵐の問いかけに頭を左右に振った。
――そういうことじゃなくて。
「どうして……」
三夜子はじっとうつむいた。
「どうして、こんなことをしてくれるんですか?」
顔が熱くなっていく。こめかみがずきずきと痛む。もう、我慢できなかった。三夜子は、ついに泣き出してしまった。
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