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パーティー会場のミンティエンは、レストランマッティーノから徒歩で五分のところにあった。短い距離を二人は歩いた。歩道に夜のネオンが光をおとし、道路は車が行き交う。イエローキャブのタクシーがクラクションを鳴らしながら走り去った。
五十嵐は会場へ向かう途中で蝶ネクタイを結び、ドレスの三夜子を気づかうように歩幅を合わせた。
「歩きづらくない?」
五十嵐がたずねる。
「だって、ドレッサージュですよ? 見てくださいよ」
三夜子は足音を石の歩道に響かせながら五十嵐の脇を通り過ぎ、軽やかに歩いた。そして、ゆっくりとふりむいて明るく笑った。
「君ってほんと……」
五十嵐はなにかをいいかけてやめた。そして微笑をこめて彼女の後ろ姿を見つめた。彼は、ズボンのポケットに両手を突っ込んで、三夜子のあとをついていった。
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