#10ダイヤのピアス

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 会場につく頃には、もうとっぷりと日が暮れていた。  二人は、照明が美しく輝く、御影石でできた奥行のある正面階段をのぼった。彼は三夜子をエスコートして三段目に足をかける。 「おそいじゃないか」  顔半分をヒゲでおおわれた、たくましい男が二人に近づいてきた。五十嵐と同じく、体に合ったタキシードを着ていた。だが、少し凝ったデザインだ。彼は五十嵐より背が低く、体は少し厚みがあった。 「すまない、樋口」五十嵐は三夜子より一歩先を踏み出して、男に近づいた。  この人が樋口一夫なのか、と彼女は思った。三夜子は、きょとんとした顔で五十嵐の後ろからのぞいた。 「あまり、こういった場所は苦手でね」  五十嵐は樋口と握手を交した。 「お前がいないと華がないさ」  樋口は、微笑んで五十嵐と軽く抱き合った。そして、三夜子と目が合うと、にやりと笑い、言葉をつないだ。 「ずいぶんと美しい彼女だな」  彼は五十嵐の耳元でささやいた。
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