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「ミヨちゃん! こっちに蟹入りパイがあるよ!」
樋口は早速三夜子の愛称をつけた。
振り向くと、樋口がこちらに向かって手招きをしている。三夜子は、口をすぼめて五十嵐を見た。
五十嵐は、あきれたふうに笑った。
「蟹が好きなんだ、あいつ」
五十嵐は、行ってやってよ、というふうに三夜子に首を傾げてみせた。三夜子はふっと笑い、樋口の元へ向かった。
少し、五十嵐とエリザの動向が気になって、ちらちらと振り向きながら歩いた。二人は愛し合う恋人のように、親しげに会話している。
しばらくして、あたりがざわめいた。
カメラのフラッシュが入口でたえまなくひかった。会場で一番明るい。まるで、花火のようだ。先ほどのエリザとは比べものにはならなかった。客人の視線がそちらに注がれた。
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