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「そんなにからかって楽しいですか?」
三夜子は不満げに片眉をつりあげた。五十嵐は、資料から三夜子へ視線を移し、口を開いた。
「エレベーターがきたよ」
三夜子はふんと鼻を鳴らして、エレベーターに乗り込んだ。彼が後から大股で一歩踏み込み、エレベーターに入った。
三夜子は、五十嵐に背を向けたまま、ボタンの前に立った。
「五階、押してくれないかな」
落ち着きはらった五十嵐の頼みに、三夜子は俯いて顔をしかめた。
「はい」
三夜子が感情のない声で返事をすると、五十嵐は不快感を表すような咳を一つした。
しばらくして、三夜子はふと考えた。彼はこの学校の校長だ。その意識が上がって、彼女は全身を緊張させた。
「あの……」
頭を少し下げた。
「すみませんでした」
エレベーターのドアが開き五階へ着くと、五十嵐は何もこたえずに彼女の横を通り過ぎた。
「む、無視?」
三夜子はぼんやりと呟いてしばらく扉を見つめた。
再び怒りが込み上がる。彼女はドアに向かって、歯をむき出しにした。
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