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三夜子は安堵の笑みを浮かべ、黒いロゴが入った胸に手を押し付けた。
「となりにすわる?」
「ああ、はい」
三夜子はぎこちなく笑って、そばに近寄った。
女は、隣の椅子に置いた自分の荷物を床へうつし、席を空けた。三夜子はそこへ腰をおとした。
「プロコースの二年生?」
そう言って、女は手際よく化粧品を机に並べた。彼女は、肩までの髪を後ろで一束にし、キャラメル色のフレームの眼鏡をかけ、知的な雰囲気をただよわせていた。
眉は描き足す必要がないほどの綺麗な形で、斜めにこぼれ落ちた前髪が大人の女性を感じさせる。三夜子はしばらくみとれてしまった。
「ええ、そうなんです。あなたは?」
「わたし? わたしは美容師やってるのよ」
女はにっこりと笑った。
「どうして、そんな人がここへ?」
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